私には更年期の症状があります。
40代後半くらいから、自覚しています。
始めにおかしいな~と感じたのは、
とんでもない疲労感でした。
イカの追い込みしていても、もう全然泳げないし、潜れないし、船に飛び乗れないし。
毎日元気ドリンクでなんとかこなしていたけど、漁の日はヘロヘロのボロボロでした。
前の年と全然違うんです。
イカの追い込みどころか、シャコガイ漁とかタコ漁のようなマイペースで泳げる漁でも、
息切れがすごくて。
それである日、
息切れから呼吸への不安感になり、パニックになりました。
海で。
私はダイビングインストラクター時代に、パニくってる人を何度も見てきました。
海でのパニックが命にかかわることもわかりますし、パニックになっている人への対処法も学びました。
でもこの時初めて「パニック状態の人の心理」を理解しました。
これは本当に、コワイ。
得体のしれない恐怖心、息ができなくなるのではないか、つまり死ぬのではないか、もうダメかもしれない、死ぬのはイヤだ、
みたいな感じで、心臓がバクバクして、ますます息が荒くなり、息がしにくくなる。
これはマジでヤバイ・・・と思いました。
頭の中のもう一人の私が、必死に落ち着かせようとしています。
「大丈夫だよ
なんともないよ
息を吸いすぎないで、大きくはいてみよう
とりあえずこの浮きにつかまろう
ゆっくりと浅いところに移動しようね
あ~マスクを捨てちゃダメ!」
数分後、落ち着いた私は、別のことが頭をよぎって不安になりました。
「こんな状態では、漁をを続けてはいられない。
いつかパニックからおぼれて死ぬ。
漁を続けたいなら、この状況をなんとかしないといけない!」
まずは、婦人科へ行きました。
何かの検査をして、見事認定(?)され、漢方薬を処方されました。
まあ自分でもわかっていました。
毎月のモノが来なくなっているんだから、いわゆる更年期でしょう、とはね。
また、パニックについての本を数冊読みました。
眉ツバモノの本もあったけど、
とにかく「パニックでは死なない」ということがよくわかりました。
次に、パニックが起きそうになった時に自分に効果的な方法を考えました。
まず一つは、
「大丈夫、なんともない、パニックでは死なない」と自分に言い聞かせること。
心の中で思うのではなくて、小さな声でいいから自分の耳に聞かせるようにします。
それから、決して息を吸いすぎないこと。
パニックで「息ができない!吸わなければ死ぬ!」と慌てて大きく深呼吸していたら、過呼吸気味になってますますパニくった(その時は救急車で運ばれた)ことがあったのです。
吸うのではなく、息を吐くことを意識する。
いつもより少しだけ長めに息を吐くと、ちょうどよい量を自然と吸える感覚があります。
そして、海であれば、浅くて魚がいっぱいいるところに移動するようにします。
明るくて小魚たちがワーッと泳いでいるところに来ると、気がまぎれて恐怖心が薄れていきます。
いつもはうっとうしいベラとかモンガラたちに何度も救われました。
デバスズメダイもいいですね~
みんなありがとうね~私のために集まってくれて!おかげで落ち着いたよ~
また、そもそも漁でパニックが起きるときは、息ごらえを長くしてしまって苦しさを感じた時だとわかったので、
シャコガイを捕る時もタコを引っ張り出す時も、あんまり無理しないようにしています。
深いところで探さないのも大事です。
見つけたら捕りたくなってしまうから…見なければよいのだ
それで一番効果があったのは、
お勤めをやめたことでした。
漁業のほかに副業としていろいろと仕事をしていますが、
当時、やりがいがあるけどめちゃストレスな人にかかわらざるを得ない仕事、をしていました。
漁も家族も島での暮らしも幸せで満足していることだらけなので、
改善するのはココだな、とすぐ思い当たりました。
成し遂げたいことがたくさんあったけど、体に出たらもう仕方ない、とあきらめて、辞めることにしました。
辞めた後、本当に症状が改善しました。
ストレスって、すべての不調のもとなんだな…
その後、良い漢方薬に出会えたこともあり、
しばらくパニックは出ていません。
出そうなときはありますが、予兆がわかるので、
「大丈夫、なんともない、パニックでは死なない」
とすぐに自分に言い聞かせて、お魚たちのところに泳いでいきます。
これらの対処法に効果を感じているので、まだまだ漁を続けて行けそうです。
今の更年期症状の悩みは、
体のかゆみとか湿疹とか、ドライアイとか、
まあいろいろなちょっとした不調はありますが、50年も使えば体もどこか故障したりするものでしょう。
生活には支障なく、小さな整備をしながら、幸せに日々を過ごしています。
致命的な故障につながるストレス副業はもうやらないでおこう、と腰を据えました。
いよいよ50代、
自分が本当に好きなことややりたいことを、これからも長く楽しく続けるためにどうすればよいか、
体と心に素直に従わざるを得ない年齢になったと感じます。
ムリは聞かないけど、正直今が一番いいかもね。
まだあと40~50年くらい生きそうなので、無理せず好きな海仕事をやっていきます。