海の人が陸で起こす困りごといろいろ

カクレクマノミ 海のこと

夏のような暑さが続き、漁も本格的になりつつある。

冷たい海には入りたくないへなちょこ漁師なので、冬は陸で仕事をしている。
今季は、デスクワークのお勤めをした。週5の9~5時勤務、というものを体験してみて驚いたことやたくさんの気づきがあり、いつかそれは書いてみたいと思うのだが、その陸仕事でちょっと困ったことがあったので、今日はそれを書いてみたい。
普段海で過ごす人ならわかってもらえるのではないかと思う。

ある平日、オフィスでパソコンに向かって仕事をしていて、ちょっとのどが渇いたな、と持参した水筒の冷茶を飲もうとして、困ったことが起きた。

盛大にこぼしてしまったのだ。

実はこれ、本当によく起こす。
こぼし方としては、水筒をひっくり返してしまってこぼすのではなくて、口元からあご~胸元の服にかけて、飲み物を口からあふれさせてダァっとこぼしてしまうのだ。

なぜこんなことを起こすかと言うと、普段海では、ペットボトル500mlの水を持っていくのだが、海から上がって船上での休憩時に水を飲むときに、ちょっと顔の塩も落としたくてこぼし気味に飲んでいるからである。

素潜り漁では、顔の上半分、おでこから鼻やほほまではマスクに覆われていて、下半分の口回りからあごは海水に曝露している。
海水がついたまま日が当たると塩がザラっと生成され、塩気があるとちょっと肌がひりつく。
それで水を飲みつつ、ついでに洗い流す感じなのである。

そのクセが抜けなくて、陸で水を飲むときはよくこぼす。
気づくのが遅れると、服がびしょびしょになる。
家では着替えればよいが、今回は職場で、お茶でやってしまった。
あ~あ。
早く気付いたからまだ少しだったのでよかったが、お茶の色が服に染み付かないように拭き取って、胸元は濡れたまま自然乾燥させるしかなかった。

まあ、カフェでアイスコーヒーをこぼした時よりはマシだった。
コーヒーは染みついたらもうなかなかとれないし、わざわざ買った高いコーヒーをこぼして減らし、カフェを即退散することになって、ずいぶんと落ち込んだものだ。
それに、ちょっと子供みたいなこぼし方なので、とにかく恥ずかしい。
こんな大人を見かけたら、きっとこの人は素潜り漁師なのだろう、と優しく知らんぷりしてほしい。

この困ったことと同じ感じで起こる「困ったことその2」は、やたら顔を洗ってしまうことである。

ちょっと汗をかいたりすると、すぐその辺の水場でじゃぶじゃぶ顔を洗ってしまう。
普段は別に海でも陸でも困らないのだけど、久々に人々が集う場でのお勤めで、一応少しばかり化粧をしていたのに、その日は暑くて汗をかいたので、何の疑問もなくバシャバシャ顔を洗ってしまった。
洗ってからハッと気づいたが、いつも持っている手ぬぐいもデスクに置いてきてしまっていて(手ぬぐいはハンカチ代わりにも頭に巻いて邪魔な髪除けにも首筋に巻いて日よけにもなる優れモノ)、
びしょびしょの顔で、
もうどうすんだコレ、
だったのだけど、幸いそのトイレには紙タオルが備え付けてあったので、拭くことはできた。
優しく顔の表面の水気を押さえただけのつもりだったが、マスカラの黒とファンデーションのタンオークルが固い紙タオルに残った。
これは、お勤めを始めて早々に起こした出来事だったが、それで早々に化粧をするのをやめた。
慣れないことはするもんじゃないし、私の顔なんて別に化粧をしようがしまいが誰にも仕事にも何の関係もなく、無駄な時間と労力と資源をかけずに済むことになった。
おかげでそれ以降、職場でもいっそう気軽に顔を洗うようになった。
さっぱりして気分もよいのだ。

ほかにも似たような困ったことには、ものを食べた後に袖で口を拭ってしまうこと、がある。
海ではウェットスーツやラッシュガードを着ているが、特にてんぷらなどを漁の合間につまんで口についた油を拭いたいときに、いちいちティッシュで拭いたりしない。
もう袖口でぬぐってしまう。
どうせ海に入って何やかやしているうちに流れてしまうし、ウェットスーツの袖口が多少汚れていたって何も困らない。
そのままのノリで陸で過ごすと、うっかり着ている服の袖を汚すことになる。
汚れるだけでなく、一緒に食事をしている人をびっくりさせることになるだろう。
「子どもか・・・」と突っ込んでくれたらまだいい。
上記のような言い訳をするチャンスをもらえる。
でもたいていの大人は、そんなことは見て見ぬふりをするし、「子どもか・・・」と心の中で思うだけで、私はただの「お行儀の悪い大人」としてそれ以降扱われるだけだろう。

最後に、致命的に困ることを告白しようと思う。
こんなこと書いて、イメージダウンするのは嫌だなと思うが、今だってそんないいイメージがあるわけでもないし、何しろどこの誰かもわからないのだからいいのだ。

それは、何もないのにうっかり小の方が出てしまうことである。
・・・やっぱり恥ずかしいなぁ。
でも、海の人ならきっとわかってもらえる。
同じ悩みを持っている人も多いと思う。

出てしまうと言っても、ほんの少しで、漏らすというほどでもない。
今のところは。
これがなぜ起きるかと言うと、海で泳いでいるとき、もよおしたら、する。
そこには何の儀式もない。
どこか決まった場所もない。
どこでもかしこでも、もよおしたらすればいい。
いちいち船に上がってトイレに行くこともない。
どうせ船のトイレもたれ流しだ。
タコをとって次のタコを探しているときにすることもあるし、もうすぐ船に上がる前にしておこう、と言う時もある。

ただ一つ、私なりのこだわりがあるとすれば、私は絶対にウェットスーツを脱いでから、する。
ウェットスーツを着けたままでする人は多いし、ダイバーならほとんどが経験あると思うが、匂いが残るのが、私は本当にイヤなのだ。
脱ぐとはいっても、下のズボンだけ、お尻を出すだけだ。
本当は浮遊物いっぱいの海で素のお尻をさらすのは危険行為だが、ここだけは譲れない。
たとえクラゲの触手にお尻のほっぺを刺されてミミズ腫れになろうと(経験あり)、俯瞰すると本当におかしな恰好だろうなと自覚してもいるが、脱いでからするようにしている。
イメージがわかない人のために詳しく説明すると、水面に浮きながらズボンを膝までおろして、浮いたまま、する。終わったらズボンを上げる。
それだけ。
簡単だよ。

まあ、海ではそんな感じなのだが、漁が本格的になり陸の日の割合が減ると、陸にいるのに、もよおしたら、あやうくしそうになる。
「おぅ!
いま・・・まじ・・・やばかった・・・」
みたいな瞬間が時々訪れる。
まあでも今までは、
「やばかった・・・(でも出なかった)」
で済んでいたのだが、先日とうとう
「おぅぅ!」
となった。
本当に本当にわずか1滴くらいだったと思う。
でも、ゼロとイチでは全く違う。
一気に不安になってきた。

何しろ現在アラフィフ女性なので、仕事に関係なく、だんだんとそういう悩みが出てくるお年頃だ。
ほら、テレビCMでも雑誌の特集でも、こういうの、やっているのを見るでしょ?
私なんて、年齢+海での習性=きっと早いうちに1滴が2滴になり、そのうち10滴くらいになるのかもしれない。
もう滴で測ってはいけないくらいになるかもしれない。
海では別に何CC出たっていいけど、陸ではそれなりの装備をしておく必要があるだろう。
そうでなければ、いずれ陸で致命的な事件が起こるに違いない。
もう人様の前に出られなくなるかもしれない。
どんな装備が必要なのか、どんな機能があって、お勧めはどれなのか、近いうちに特集記事を読んでみなければ。

付け加えておくが、これは今回のお勤め先で起こしたことではないので、安心してください。

ちょっとすごいカミングアウトをしてしまっただろうか。

陸に合わせて海での習性を変えるつもりもないし、陸生活ではまだしばらくは「今後重々気を付けます」くらいでなんとか過ごせそうなので、そんなに大した困りごとでもないんですけど、陸だけの生活だとあんまり起こらないことかな、と思う。

まあ、こんなことで困っている人もいる、また、こんなことしでかしても理由あるから許して、と言う気持ちを込めて、書いてみました。

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