9月2度目の台風は、当初の想定以上に強くて長い。
まだ玄関のドアをガタガタ言わせている。
幸いなことに、今のところ停電はしていないので、生活自体は快適だ。
嫁いで宮古島に来る前からもう何年も沖縄県に住んでいるし、台風にはずいぶん慣れていると思う。
家が飛ばされたとか、停電が1週間とか、昔の人に比べたら、そりゃあ苦労は相当少ないが、それでもずっと海とかかわる生活をしてきたので、台風の対策についてはいろんな経験をした。
基本的には、しっかり備えをすればよい。
台風は来ることが分かっている。
地震のような突然の、不意の、災害ではない。
特に漁をしていると、台風になる前の熱帯低気圧のころから影響が出る。
フィリピンの東に熱帯低気圧がいるころから、宮古島の海ではうねりが出る。
私たちの漁は浅瀬で素潜りなので、うねりはすぐにわかる。
「あれ、何だこのうねりは?」と感じて天気図を見たら、熱低ができていた、というのはよくあることだ。
それで1週間予報とか2週間予報とか、いろいろなお天気アプリで情報をみて、夫は漁師仲間で情報を取り合って、船の台風対策をいつ頃するか、風向きはこんな感じになりそうだから今回は船を陸揚げするとか、こっちにもロープを張っておこうとか、船の向きはどうしようとか、いろいろ対策を練る。
納得のいく船の対策が終わったら、家の対策をする。
家の周りに出ているものはほぼすべて屋内に片づけ、入りきらないものは風の影響がない場所に固めてネットをかける。
家の窓には雨戸がついているし、雨戸のないところにはネットをかける。
飛びそうな洗濯干し場の台には、重石のためにでっかいクーラーボックスを置いて水を満タンにためておく。
そうすれば万が一水が使えなくなっても、ここから汲めばいい。
車も、燃料を満タンにし重さを増しておく。
停電が長い引いたときには、車のエンジンをかけてスマホ充電する必要があるかもしれないし、万が一家の窓が割れて家内にいられなくなっても、とりあえず車内で安全に寝られるだろう。
もちろん買い出しもしておく。
台風の間だけでなく、物資が乏しくなる台風後も見据えて、だ。
庭に植えたオクラは小さくても収穫しておく。
台風の間に大きくなりすぎて硬くなってしまうから。
台風対策で大切なのは、やりすぎだと思うほどやっておくこと。
この程度でいいかな、と甘く見て、台風の間に不安にさいなまれることほどイヤなことはない。
独身の頃はアパートに住んでいたから、台風対策というほどのこともせず、久々の海の休みだ~♪とマンガ喫茶に長時間滞在したりして、楽しく過ごしたものだ。
今は、もっぱら動画配信と家族マージャンで楽しく過ごしている。
ちょっと前は台風のたびにDVDをレンタルしに行っていたけれど、今はアマゾンプライムビデオで、無数の無料配信の中から家族で見られるような映画やドラマを探して見ている。
台風で海も畑も庭仕事も何もできないし、学校も休みだし、夜更かししてドラマシリーズを延々見ていてもいい。
ただ、夫はアクション映画を見たいし、娘はアニメを見たいし、私は『ブリティッシュ・ベイク・オフ』のようなドキュメンタリーが好きなので、まあ、私は二人にチャンネル権を譲るようにしている。
停電したら、ラジオに切り替えてマージャンをする。
家族3人で、各々好きなお菓子を食べたり麦茶やらビールやら飲んだりしながら、わいわい言いあって卓を囲む。
ヘッドライトやネックライトがあれば暗くなってもできる。
正直に言おう。
台風は楽しい。
楽しみにしている節もあるほどだ。
その間漁に出られなくて収入は途絶えるけど、どうせいつかは台風は去っていく。
そしてまた、漁に行けばいい。
漁は楽しいし、台風もまた楽しく過ごす術はある。
※写真は今年のデイゴです。
デイゴが咲くとその年は風が吹くとか。
まあまあ咲いてましたね、そう言えば。